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2024.04.12

ファッション

“iPhoneみたいな靴”キーン「ユニーク」が10周年で大豊作! 垂涎のラインナップから3足を厳選



24SSのパリファッションウィークで注目していたのはノワール ケイ ニノミヤだった。モンクレール ジーニアスに抜擢されたのも記憶に新しいが、二宮啓が手がけるコレクションは服づくりを更新するポテンシャルを秘めている。そんなランウェイを闊歩したのがキーンの「ユニーク」だったのだ。

新し物好きのピッティの御仁に愛され、数々のブランドとコラボレーションしてきたキーンだが、これにはちょっと驚いた。

iPhoneのようなフットウェアを
ローリー・ファースト・ジュニア。

ローリー・ファースト Jr.。


「ユニーク」は2006年に家業入りしたローリー・ファースト Jr.が14年に世に問い、瞬く間にブランドの顔にのぼりつめたモデルだ。

フラットなレザーを足のかたちに沿わせようと思えばどうしたって無理が生じる。職人は熟練の技でこれをねじ伏せてきたわけだが、ローリー Jr.はそこには改善の余地があると考えた。

たとえばそのレザーに切れ込みが入っていたら――。ローリー Jr.はこの仮説を検証するため、短冊状に細かくナイフを入れた紙でソフトボールを覆ってみた。

靴に比べればはるかにカーブがきついボールもずいぶんときれいに収まった。ローリー Jr.の頭の中でなにかがかちりと音を立てた。紐でアッパーをつくるというアイデアが芽生えた瞬間だった。



そのころのローリー Jr.はiPhoneに首ったけだった。それまでの携帯電話はその筐体をボタンが埋め尽くしていた。ミニマルでソリッドなiPhoneの革新性に惹かれたローリー Jr.にとって、紐1本というプリミティブなアイデアは格好の遊び相手だった。

自立するコンストラクション、均等なテンション……乗り越えなければならない課題は山ほどあり、その試行錯誤は3年半にも及んだ。そうして、オープンエア・スニーカーと銘打った、2本のコードと1枚のソールで構成されるフットウェアが完成した。

試作段階。ラストに釘を打ち、たこ糸を張り巡らしている。

試作段階。ラストに釘を打ち、たこ糸を張り巡らしている。


コードはリサイクルポリエステルで芯地を包んだもの。型崩れを防ぎ、耐久性もある。慧眼だったのは、2本のコードを編み込むことで可能となった可動域のあるコンストラクションだ。

コードジャンクションアッパーと名づけられたこのコンストラクションにより、「ユニーク」はフットウェアとしてのシルエットを保ちつつ、足の動きにしなやかにフィットする。

そのコードはボトムを貫通し、バックサイドにU字状に走らせたコードにくくりつけている。キーンとセットで語られるインターロッキングコード システムとはこの底付けのコンストラクションをいう。



欧文の綴りは“UNEEK”。“KEEN”を逆に並べ替えて、頭に“U”をつけた。それは友人のアイデアだったそうだが、ローリー Jr.は二つ返事でこれをモデル名とした。画期的なモデルである。モデル名もただのユニークじゃつまらないと考えたのだろう。

ちなみに、過去のインタビューでは「これは後から気づいたことだけど、“KEEN for You”と読めるね」と語っている。


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