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2023.09.26

ライフ

音楽談義に花が咲く純喫茶「かうひいや カファブンナ」で、音とコーヒーのハーモニーを堪能

渡辺真史●1971年、東京都生まれ。ベドウィン & ザ ハートブレイカーズのディレクター。ローカルとインターナショナル、2つの視点で東京をクルージング。

渡辺真史●1971年、東京都生まれ。ベドウィン & ザ ハートブレイカーズのディレクター。ローカルとインターナショナル、2つの視点で東京をクルージング。

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年季が入った木製の看板には「かうひいや カファブンナ」と刻まれている。六本木、よく晴れた夏の午前。店主である能勢顯男(のせあきお)さんを訪ねた。

渡辺 こんにちは。この喫茶店は、創業51年目を迎えるそうですね。

能勢 はい。オープン当初は目の前の出雲大社東京分祠に鳥居があった時代です。

渡辺 六本木といえば東京を代表する繁華街ですが、開店当時から街のイメージは変わりませんか?

能勢 どうでしょう。繁華街というより、銀座で遊んだ人が流れてくる場所でしたね。

渡辺 今のように“メイン”な街ではなかったのですね。ちなみに、棚にぎっしり並んだCDは普段店内でかけているものですか?

能勢 ええ、音楽は昔から好きでした。特に1940年くらいまでのアメリカのポピュラーミュージックが素晴らしいです。大概の曲ならタイトルはもちろん、誰がいつ作ったのかまでわかりますよ。



渡辺 それはすごい。お客さんとの音楽談義にも花が咲くのでしょうね。

能勢 リチャード・ロジャースやコール・ポーターといった作曲家の曲をかけながらね。僕はラジオで音楽番組を持てるくらいには詳しいと思うのですが、お客さんにも知識のある人は多いです。音楽の道場破り、今も受け付けていますよ(笑)。

渡辺 静かな空間に馴染む、独特な味のある音ですね。コーヒーにもきっとよく合うんだろうな。

能勢 うちのコーヒーは、昔からずっと変わらず焙煎が強いフレンチローストです。ただ、豆は生き物ですので、仕入れたタイミングによってそれぞれ微妙に性質が異なります。その特徴を捉えて対応しながら、最上の一杯に仕上げていく。いつまでたっても簡単ではありません。

渡辺 それをひたすら続けて51年、本当に尊いことです。ずっとおひとりで店を回されているのですか?

能勢 今はすべてひとりでやっていますが、昔はスタッフを雇っていました。ひとりになってから、もう20年ほど経ちますかね。

渡辺 これまでに、もう辞めようかな、と思ったことはありませんか?

能勢 ありませんよ。いろいろな人に出会えるのも、楽しみですから。

渡辺 本当にたくさんの人がここで美しい時間を過ごして、今もタイムスリップするかのようなひとときを味わっているんだと思います。末長くお元気で、頑張ってください。

能勢 ありがとうございます。87歳ですが、まだこれからです(笑)。

——コク深く、後味はキリッと。名物のコーヒー「ラテン」の味わいそのままに、心に染みる純喫茶だ。

「かうひいや カファブンナ」
住所:東京都港区六本木7-17-20 明泉ビル2F

電話番号:03-3405-1937
営業:12:00〜19:00 水曜定休


若木信吾=写真 増山直樹=文

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