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地域とのつながりを大切にしつつ“個”も重んじる集合住空間

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人とのつながりが希薄になっている昨今だけに、高柳さんは千葉・房総エリアにある家を通じて地域との関係性を深めたいと語る。
とはいえ、家は本来プライベートな空間。双方のバランスに対してどう折り合いをつけるかは難しいところだが、その最適解は“散りばめられた家”にあった。

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家屋は敷地の北側に寄せて建てる。戸建住宅を計画するときのセオリーである。南側からの採光をより良くするためなのだが、そうなると似たサイズ、似た様式の家が並ぶことに。ただ、高柳鉄平さんの建てた規格外のご自宅を訪ねると、各々暮らしのカタチは十人十色。それぞれの家のサイズ、家のカタチがあっていいと改めて思えてくる。

敷地の奥へ向かうにつれ徐々に高くなる土地。その最奥部に母屋を配置。なるべく造成せず、基礎を小さくして高床にすることで中庭への風通しを良くした。

千葉県有数のサーフスポット、一宮海岸の隣町で生まれ育った鉄平さんの趣味は、当然のごとくサーフィン。それもあって結婚後、同エリアに自分の家を建てたいと思うようになった。そこで出会ったのが海まで徒歩3分の今の場所である。

敷地は、道路側から奥に向かって緩やかに上がる傾斜を持つ、細長い形状の土地。鉄平さんは以前勤めていた建築設計事務所の先輩に協力を仰ぎ、学生時代や仕事、サーフィンの仲間たちを呼び込めるような家を考えていった。導き出されたのは、等高線に沿うように、3つの小さな棟に分けた住宅だ。

千葉・一宮の海岸から続く道路に面する棟は、1階がカフェレストランで、2階はフリースペース。友人にテナントで貸している1階は「山本商店」として営業しており、2階はコワーキングスペースとして近い将来に開放予定。

道路側は、1階をレストランスペースとして貸し、2階をフリースペースにした棟を配置。幅も高さも十分にあるそれは、奥の敷地に対し目隠しの役割も担っている。敷地中央はゲストルームと書斎の棟。中庭を挟み、最も高い場所にあるのが母屋の専用住居だ。3つの住棟は、棟ごとに段差をつけて建てることで、互いの視線をずらし、程度な距離感を生み出している。そして、桟橋のように伸びるウッドデッキでつなげられ、行き来ができるのだ。

敷地の一番奥に設けた母屋の床は2階に相当する高さ。木製で設えた東側の大きな掃き出し窓からは眺望を楽しめる。戸を開け放てば中庭に面した縁側に出ることも可能。

「アジアの民家が頭にあった」と言う鉄平さん。「なるべく元の土地をそのまま生かして、土地に負担をかけたくなかった」との考えもあり、小さな独立基礎の上に高床式の母屋を造った。それにより、母屋と中央棟に囲まれた中庭は、風や視線が通りやすい開放的な場となり、よく友人たちとバーペキューをしているという。

3つの棟をつなぐ桟橋のようなウッドデッキには、まるでリゾート地にあるコテージを巡っているようなワクワク感がある。非日常のような時間もまた高柳家の特徴になっている。

「子育て世帯を含め、地域でのつながりを、この家を通じてもっと増やしていきたい」とは高柳さん夫妻。地域にオープンでありながら、家族のプライバシーもしっかり守る。特殊な配置の家が、その絶妙なバランスを生み出している。

離れのようなゲストルームの棟には、鉄平さんの書斎スペースも。近隣にあるオフィスからの帰りに立ち寄り、事務作業を終えてからプライベート空間である母屋へ。
オレンジ色の左官材を塗って仕上げた浴室は、大きなガラス戸を設けて自然光をふんだんに取り入れている。サーフィンのあとは家に入る前にここへ立ち寄り潮を落とすとか。
敷地中央にはゲストルームと書斎を設置。浴室やトイレなどは、屋根付きの外廊下でつながれ、友人たちが泊まる際によく使われる。


【高柳さんのOH! 家データ】

◆間取り
住居を3つの棟に分けて配置。敷地の最も西側にある棟は1階がレストラン、2階がフリースペース。中央にゲストルーム・書斎・浴室の棟があり、中庭を挟んで母屋となるLDK・寝室の棟となる。

◆建築概要
竣工:2016年
構造・規模:木造・2階建て+平屋建て
敷地面積:661.35㎡(199.7坪)
建築面積:153.62㎡(46.4坪)
延床面積:163.03㎡(49.2坪)
設計:かめ設計室+建築集団海賊
http://kamedesign.net

【家主さんのプロフィール】

高柳鉄平さん(38歳)
純子さん、稀くん(1歳)

鉄平さんは千葉県・茂原市で工務店「建築集団海賊」(www.kaizokun.com)を経営。純子さんは横浜出身、都内で暮らしていたため外房暮らしに戸惑いもあったが、魚の美味しさに目覚めてからは外房ファンへ。

永禮 賢 =写真

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