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ワイン専門の角打ち「no.501」。店名に込められた“ネオな”こだわり

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「ネオ角打ち」という名の愉悦Vol.1
酒屋の店頭で飲むスタイルを「角打ち」と呼ぶ。「四角い升の角に口をつけて飲むから」「店の一角を仕切って立ち飲み席にするから」など名称の由来は諸説あるが、いずれにせよプロの酒飲みが集うイメージ。一般人には少々敷居が高い。しかし、最近では誰でも入りやすい新しいタイプの角打ちが続々と登場している。そんな「ネオ角打ち」の魅力に迫る連載です。

角打ちといえば日本酒、ビール、チューハイ、ハイボールあたりだろうか。しかし、昨年12月、お洒落タウン青山の一角にワイン専門の角打ちがオープンした。店名は「no.501」。ジーンズ専門店ではない。何度も言うがワイン専門の角打ちだ。

地下鉄銀座線外苑前駅から徒歩4分

周囲には大使館やアパレルショップなどが立ち並ぶ。ガラス張りの奥にワインセラーらしきものが見えた。

「角打ち? いや、ウチはそういうんじゃないから」と言われるんじゃないかと不安になったが、看板ではきっちり「角打ち」を標榜していた。

「KAKU-UCHI」「SAKAYA」とある。

よし、入ってみよう。

入り口の扉を開け……られない

やたらと重いのだ。その理由は最後にわかる。迎えてくれたのはオーナーの尾藤信吾さん(35歳)。苗字は「おとう」と読む。おとうさんだ。

「いらっしゃいませ」と尾藤さん

まず、カラフルなワインラックが気になった。デザインがかっこいいうえに、外側にも引っ掛けられるようになっていて使い勝手がよさそうだ。

「あ、これですか? 鉄骨業者に頼んで作ってもらった特注品なんです。大きいボックスが10万円、小さいフックが1万円ぐらいだったかな」

尾藤さんはファッションショーなどの演出家で、こちらの角打ちは副業だという。

「イベント業ってセレブの人たちを相手にすることが多くて、彼らはワインとかシャンパンを飲むんです。話を合わせるために研究しているうちに、すっかりハマっちゃいました(笑)。こんなに奥が深いお酒なのに日本のワイン消費率は10%以下。もっと普及させたいという思いもあって、この店を始めました」

セラーの奥に飲むスペースがある。さっそく一杯いただこう。尾藤さん、安くて美味しいやつくださいよ。

「左側の『ラ・キュベ』にしましょうか」

あれ、カープ……記念?

「広島出身なので当然カープファン。さらに、小中高と野球部だったので感慨深いですよ。母校の瀬戸内高校ではファーストを守っていました。1コ下が甲子園に出ましたね」

どうせなら37円にすればと言ったら「それはさすがに無理でした(笑)」とのこと。どんどんワインから離れていくが、好きなプレーは「ショートバウンドの送球をすくい上げること」、思い出の記録は「小学生の時の4打席連続ランニングホームラン」だという。

女性スタッフが注いでくれた

聞かずにはいられない。「アイメイク、キマってますね」。「緑が好きなんです。コモドドラゴンとか」。

ひと口飲むと……

あれ、飲んだことがない味だ。なんというか、ぶどう感がすごい。

「ワインってお酒の中で唯一水を入れていないんです。ぶどうの果汁だけ。さらに、ウチで扱っているのは自然農法によるぶどうを使った『ヴァン・ナチュール』と呼ばれる自然派ワインです」

さらに、「no.501」という店名の由来も教えてくれた。 「『ビオディナミ』という農法では畑に散布する調合材に番号が付けられていて、ぶどう畑に使われるのは500か501。ちなみに、501は『砕いた水晶の粉を雌牛のツノに詰めて6ヶ月間地中に埋める』というものです」

ほとんど黒魔術の世界である

「いや、実際そうですよ。これを雨水で溶いて地球の自転と反対向きにかき混ぜるんですから(笑)」

店内に飾られていた雌牛のツノ

おまじないによって味の深みが増すということなのかもしれない。ここで、トイレをチェックしてみると……空中庭園だった。

自動で水が出ないかと緊張しながら撮影

この店はワイン同様、フードにもこだわっている。迷った末に「自然派チーズ4種盛り」(1500円)を注文。

こちらでございます

右上から時計回りに「生バジルを練り込んだチーズ」「臭くないブルーチーズ」「シークワーサーチーズ」「よもぎを練りこんだチーズ」。非常にやさしい味で自然派ワインによく合う。中央は尾藤さんの実家で採れたブルーベリーだ。

「沖縄在住のイギリス人、ジョン・デイビスさんが作ったチーズ。使う食材や調味料はチーズ菌を含めてすべて沖縄産なんです」

「あっ、この人です」

ここで、ふと厨房を見ると大きな桃が剥かれていた。

「広島の『阿部白桃』」という桃で、大きいもので一玉2000円以上の値段がつきます。まだメニューには取り入れていませんが、何らかの形でお出ししようかと」と尾藤さん。

どう考えても美味しいやつだ

ちなみに、尾藤さんの実家はno.501に続き、no.505という名前でぶどうの栽培を始めたという。

ぶどう畑の様子

ほろ酔いでセラーを眺めていると、コルクやキャップではなく瓶ビールのように王冠で閉栓されたものを見つけた。これらのワインは微発泡のため、コルクではポンっと飛んでしまうからだそうだ。

王冠ワインは初めて見た

まだまだ飲む。

オーストラリアワイン「pitt nat(ピット ナット)」
同じくオーストラリア産の「JAUMA(ヤウマ)」

思わず長居してしまった。尾藤さんによれば「様々な方がご来店されますが、一番多いのは女性のひとり客。距離が近いので初対面の人同士でボトルをシェアするなどの光景もよく見られます」。

この季節、外席も気持ちいい

角打ちで飲めるグラスワインは常時10種類ぐらいで、銘柄はに日によって変わる。お値段は600円〜1500円。もちろん、これ以外にも店頭のボトルを購入して中で飲むことも可能だ。

なお、入り口の扉がやたら重かったのは年間を通じてセラーの気温を15度前後に保つため。客寄せのために開けっ放しにすることはできないが、それを補って余りある愉悦を味わえる空間でした。

取材・文/石原たきび

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