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チャーミングかウザいか?アル・パチーノに学ぶオッサンのあるべき愛らしさ。

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オッサンの醸し出す哀愁やチャーミングさに惹かれる若い女性は意外と多いという。しかし、女性ならではの「ツボ」を理解するのはけっこう難しい。そこで、映画に精通する女性ライターに、オッサン主演映画とその俳優の魅力を伺ってみた。所作や独特の雰囲気、生きざまなど、作品の役柄から見る「格好いい男性」とはいったいどんな人物像なのか。魅力を語ってもらった。

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【今回の先輩オッサン】

アル・パチーノ(フランク・スレード中佐)/『セント・オブ・ウーマン/夢の香り』

(C) 1992 UNIVERSAL STUDIOS. ALL RIGHTS RESERVED.

努力は力なり 言わずと知れた名優アル・パチーノ

『ゴッドファーザー』シリーズ(72年 / 74年 / 90年)を代表作に持つアル・パチーノ。
その『ゴッドファーザー』『ゴッドファーザー PART II』をはじめ『セルピコ』『狼たちの午後』『ジャスティス』『ディック・トレイシー』『摩天楼を夢みて』では7アカデミー賞にノミネート、そして52才のときに8度目のノミネートとなった『セント・オブ・ウーマン/夢の香り』で、悲願の主演男優賞を手にしている。言わずと知れた名優だ。シチリア移民の子として生まれ、貧しい少年時代を経て、26才のときにアクターズ・スタジオで本格的に演技を学び始める。演劇の世界で注目を浴びたあとに映画界の道も開けていった。努力の人であるからこそ、どんな役にも深みが生まれるのだろう。

チャーミングなオッサンを観たいあなたは必見!

これまでに紹介してきたオッサン世代の俳優すべてに共通することは、年を重ねるほどよりチャーミングさとユーモアな演技が豊かになっていることではないだろうか。
アル・パチーノももちろんそのひとりだ。
最新作の『ブラック・ファイル 野心の代償』では野心家の弁護士を存在感たっぷりに演じているが、ひとつ前の『Dearダニー 君へのうた』では、往年のヒットソングばかりを歌うミュージシャンにしてダメ男を何ともチャーミングに演じている。『ゴッドファーザー』シリーズや『ヒート』など、男くさい映画でしかアル・パチーノを観ていない、という人にとっては意外な発見があるだろう。

伝説的な演技は圧感! これぞ実力者がなせる技!

今回は、アル・パチーノがアカデミー賞を受賞した『セント・オブ・ウーマン/夢の香り』を題材に、オッサン世代を魅力的にするチャーミングさとユーモアについて検証してみたい。彼がこの映画で演じたのは、全盲の退役軍人フランク・スレード中佐。まず驚かされるのは目の動きだ。目は見開いているけれど眼球は動かない。いったいどうやってコントロールしているのか……見れば見るほどアル・パチーノの演技に驚かされる。

(C) 1992 UNIVERSAL STUDIOS. ALL RIGHTS RESERVED.

話術を学べ! 押しの強さのさじ加減が女性を口説く鍵!

フランクは毒舌家で気難しく、姪一家の離れでひとり暮らしている、見るからに扱いにくい中年だ。そんな彼と感謝祭の週末を過ごすことになるのは、ボストンの全寮制名門高校に通うチャーリー(クリス・オドネル)。奨学金で入学した苦学生の彼は、感謝祭に故郷のレゴンに帰るためにバイトをすることに。そのバイトというは、姪一家との旅行を拒否して家に残るフランクの世話をすることだった。 ある目的を果たすためにフランクはチャーリーをニューヨークへ連れ出す。その行く先々で女性に声をかける、その話術がすごいのだ。たとえば、この映画の名シーンにタンゴを踊るシーンがあるが、彼氏を待っている女性に「待ち人が来るまで相席してもいいか」と話しかけ、タンゴまで踊ってしまうのだ。その口説き方からは押しの強さのさじ加減を学べる。

視覚以外の五感で口説け! キーワードは“香り”

そして決まって女性との会話に入れてくるのは“香り”のこと。目が見えないからこそ、視覚以外の感覚で女性を知りたいということなのだろうけれど、フランクが女性たちの身につけている香水や使っている石鹸などの香りをピタリと言い当てるのはとても艶っぽい。というのも「ステキな洋服ですね」と褒めてもらうのも嬉しいが、「いい香りですね」と言われるとドキッとするものだからだ。フランクはちょっと強引なところもあるけれど、ほどよく会話の中に散りばめるユーモアやジョーク、香りを当てること、それがすごくステキに見える。

(C) 1992 UNIVERSAL STUDIOS. ALL RIGHTS RESERVED.

”指導者が持つべき資質はそれだ” 部下を守る上司のあるべき姿

この映画は、生きる希望を失いかけた盲目の退役軍人と学校でトラブルに巻き込まれた高校生、問題を抱えた者同士が縁あって出会い交流を深めていくことによって、それぞれの人生を見いだしていく感動のヒューマンドラマ。 後半、フランクがチャーリーのために演説するシーンがある。約5分間にわたるセリフはどれも心に留めておきたいものばかりだが、特に──「自分の得のために友だちを売る人間ではない。それが人間の持つ高潔さだ。それが勇気だ。指導者が持つべき資質はそれだ」これは心に響いた。生きていく中で、仕事をする中で、どちらを選択したらいいのか……と迷ったときに、きっとこのフランクの言葉はヒントになるだろう。また、チャーリー目線で観ると、口の悪い偏屈な上司や同僚とどうやってコミュニケーションを取ったらいいのか、そんなヒントも隠れている。

【Information】
『セント・オブ・ウーマン/夢の香り』

発売・販売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント
価格:1,886円(Blu-ray)、1,429円(DVD)
※2017年3月14日の情報です。

ライター
新谷里映(しんたに りえ)
映画ライター、コラムニスト。女性誌「ESSE」、映画誌「J movie magazine」「CINEMA SQUARE」、ウェブ「cinemacafe.net」「NYLON JAPAN」「T-SITE」などでインタビュー、コラムなどを執筆。日テレ「PON!」の映画コーナーやラジオに出演するほか、映画のトークイベントのMCとしても活動中。http://rierieshintani.tumblr.com/

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